「展示会用にラクに取り扱える製品見本がほしい」「営業時に製品イメージを具体的に伝えられるアイテムがほしい」といった場合には、モックアップが役立つかもしれません。
この記事では、モックアップの概要やメリット、モックアップが必要になるのは試作前なのか後なのかについて解説します。さらに、モックアップの製作方法や素材、依頼の流れやポイントについても網羅しています。
モックアップとは?
モックアップとは、完成品と同じ外観をした模型のことです。
製品開発の分野以外に、次のような業界でも「モックアップ」という言葉が使われています。
- WEBデザイン業界
- アプリ開発業界
- 建築業界
- 歯科業界
- 家電業界
厳密な意味はそれぞれ異なりますが、おおよそ「模型」と同義と考えれば差し支えありません。より平たくいえば「完成品のビジュアルイメージを明確にする見本」といえます。
モックアップは、機能の検証や研究用に製作される試作品(プロトタイプと呼ばれることもある)とは異なるものです。モックアップは、製品の見た目のイメージを社内の人や社外の人に、より具体的に伝えるために作られます。平面図などでは伝えきれない魅力も、モックアップがあることで伝わりやすくなります。
モックアップを製作するメリット
モックアップを製作するメリットは「製品の見た目のイメージを伝えられる」というだけではありません。以下のような点もモックアップを製作するメリットといえるでしょう。
メリット1:完成品よりも楽に取り扱える
モックアップは、必ずしも完成品と同じ素材で作られるとはかぎりません。モックアップの役割で重視する点は、製品のイメージが伝わることです。製品のイメージや魅力が十分に再現できるのであれば、完成品と同じ素材にこだわる必要はないといえます。
たとえば、完成品は金属の製品であっても、金属と同等の質感が再現できれば、より重量の軽い樹脂でモックアップを製作することも可能です。軽量化することで輸送コストをカットできたり、展示会などへの搬入作業が楽にできたりと、完成品よりも簡単に取り扱えるメリットがあります。
メリット2:柔軟な見せ方ができる
カットモデルで内部構造をわかりやすくするなど、見せ方の工夫が柔軟にできる点もモックアップのよさといえます。モックアップを発光させたり、簡易的な動きを加えたりと、製品がより魅力的に見えるように製作することも可能です。
製品の機能などを検証・研究する際に、企画どおりに作られる試作品ではできないような、ユニークな発想で製品のビジュアルイメージを伝えられるメリットがあります。
モックアップが必要なのは試作の前?後?
モックアップは、試作品を作る前の段階と後の段階、どちらでも必要になるケースがあります。試作の前に使われるのか、後に使われるのかによってモックアップの用途も異なります。
製品開発初期の段階
製品開発においてごく初期の段階にモックアップを作るケースがあります。試作品を製作するよりもさらに前の段階です。まだ具体的な製品の内容が決まっておらず、ひとまず外観だけイメージしたり検討したりする用途で作られるモックアップです。
試作品のイメージが固まった段階
試作品のイメージがほぼ決まっている段階でモックアップを作るケースが多いです。試作品はすでに完成しているか、イメージがほとんど確定している段階です。この段階では、次のような用途でモックアップが使われることがあります。
- 展示会で展示するサンプルとして
- 社内プレゼンや営業時に提示するサンプルとして
- 発売前の広報写真用サンプルとして
完成品ができあがった後
試作も完了し、完成品ができあがっている場合でもモックアップを製作するケースもあります。たとえば、展示などのために完成品よりも軽量で持ち運びやすいモックアップが必要になったといった場合です。
モックアップの作り方や素材
モックアップの作り方や素材にはさまざまなものがあります。モックアップを製作する会社によって、対応している作り方や素材は異なります。以下は、弊社で対応しているモックアップの製作方法や素材の例です。
作り方
- 3Dプリンターを用いて作る
- 切削によって作る
素材
- ケミカルウッド
- ABS
- ポリカーボネート
- アクリル
- エポキシ
- 金属
作り方や素材の選び方は、一律で決められるものではありません。モックアップの目的は、製品のイメージや魅力を十分に伝えることです。その目的を果たせるモックアップを作るには、どのような作り方や素材が適しているのかを考える必要があります。また、金属を使うよりも樹脂を使ったほうが安価で製作できるなど、素材選びはコストにも大きく影響してきます。
製品がより魅力的に見え、お客様にとってより好都合なモックアップが製作できるよう、作り方から素材の選定まで弊社でお手伝いさせていただきます。
モックアップ製作を依頼する流れ
弊社でモックアップ製作をご依頼いただく場合、通常の流れは次のようになります。
- お問い合わせ
- お打ち合わせ
- 材料や作り方の 確認や選定
- 製作
- モックアップ完成
納期は製作するものによって異なります。お問い合わせからモックアップ完成まで、短いものであれば3週間程度の場合もありますが、大半は1ヶ月から1ヶ月半程度の期間が必要なケースが多いです。さらに、モックアップの設計が必要な場合は、設計に要する時間も加味する必要があります。
具体的な流れや納期については、お問い合わせやお打ち合わせのときにご相談ください。
モックアップ製作を依頼するときのポイント
モックアップ製作をよりスムーズに進めるため、依頼時におさえておきたいポイントは次の2つです。
モックアップのイメージを具体的に決めておく
モックアップの完成イメージがお客様のなかで明確になっていると、製作もスムーズに進みます。弊社では、イメージやコンセプトが決まっていればデザインのご提案も可能です。
モックアップの用途などから、作りたいモックアップのイメージやコンセプトを詳細に整理しておきましょう。
- 何に使うモックアップなのか
- ターゲットとなるユーザーは誰か
- どのような雰囲気や質感にしたいか
- 最も重視したい点や見せたい部分はどこか
- 予算はどのくらいか
- いつまでに必要か
上記のような事項をお伝えいただければ、適した作り方や素材のご提案も可能です。
可能であればCADデータを用意する
CADデータをご用意いただくと製作に着手するまでの期間が短縮でき、より円滑な進捗が見込めます。CADデータがなくてもイラストを元に設計してモックアップ製作は可能なので、必ずしもお客様でご用意いただく必要はありません。もしお手元にデータがあるようでしたら、ぜひご提示ください。
モックアップの製作事例
弊社のモックアップ製作事例を紹介します。自動車部品から化粧品ボトルまで、さまざまなモックアップ製作を手がけてきました。静的なモックアップだけでなく「動いて光る」モックアップの製作事例もあります。モックアップを用いた展示や営業のアイデアにぜひお役立てください。
Eアクスル電動サンプル
Eアクスルの電動モックアップ製作例です。内部構成品の動きがわかることと「光って動く」ことが、このモックアップの特徴です。
こちらのモックアップ製作をご依頼くださったお客様がもっともアピールしたいのは、ギヤの部分です。ギヤの部分のみのモックアップを作ったとしても、展示会などのシーンでは、それが何なのか、実際にどのように使われているものなのか、伝わりづらいものとなるでしょう。
そこで、実際にギヤが使われている部分がわかるようなモックアップを製作しました。さらに内部にはモーターが入っており、スイッチを押すとギヤが回転して動作する様子がわかるようになっています。
実際に動くところが見られるため、どこに、どのように製品が使われているのかが明確に伝わり、製品の魅力も理解してもらいやすくなります。また、ギヤ部分はLEDライトで内側から発光するようにしました。モーターが回転する速さに合わせて、LEDライトの色が刻々と変化する仕組みになっています。「動く」だけでなく「光る」モックアップは、展示会などでもひときわ注目を浴びるはずです。
EV用モーターコイルサンプル
形状を切削、光造形、塗装処理にてコイルの形状を忠実に再現したモックアップです。完成品の素材には金属が使われますが、モックアップには樹脂を使用しました。近くから見ても、樹脂でできているとはわからないほどリアルに金属の質感を再現しています。
金属で製作すると重量が重たくなってしまいますが、樹脂を使用することによって完成品の5分の1から6分の1程度の重さにおさえることができました。さらに、樹脂で製作すれば金属のようにサビを気にする必要がありません。素材を工夫することで、より軽量で、メンテナンスも簡単に済むモックアップができあがりました。
化粧品ボトルモックアップサンプル
デザインモデリング、光造形、加飾を組み合わせた化粧品ボトルのモックアップ製作例です。ボトルの大きさや形状はもちろん、色、グラデーションのつけかたなど、イメージや用途をお客様からヒアリングしてデザインやモデリングから行いました。
実製品を高精度で再現したモックアップは、実製品と比べても見た目の違いがほとんどありません。そのため、量産工場へ見本サンプルとして提供すれば、完成品のイメージを共有しやすくなります。
また、モックアップを商談に活用することも可能です。たとえば、化粧品メーカー様がバイヤー様やユーザー様と商談するときには、イメージ画像などの平面資料だけでは受注が決まらないこともあります。こだわりのデザインを忠実に再現したモックアップを用意することで、バイヤー様やユーザー様が検討しやすくなり、受注増加が見込めます。
まとめ
モックアップは、製品のイメージを伝えるための模型のようなものです。試作品を作る前の段階や、試作品イメージが固まったあと、あるいは完成品ができあがったあとにも製作されることがあります。製品開発のさまざまな段階でモックアップが作られるのは、デザイン検討のためや、展示会や営業活動時のサンプルなど、幅広い用途があるためです。
モックアップを製作するメリットは、イメージが伝わりやすくなるだけではありません。取り扱いが楽になったり、より魅力的に製品を見せる工夫ができる点は、モックアップならではのメリットといえるでしょう。
株式会社イナックでは、お客様の目的やご要望に応じてモックアップ製作を承ります。 下記 お問い合わせ からお気軽にご相談ください。
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